KADOKAWA、集英社、講談社、小学館 の国内大手出版4社が、米国サンフランシスコに本社を置くクラウドフレア社に対し、いわゆる”漫画村”に類似した海賊版著作物の通信の差し止めと4億6000万円の損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴しました。
原告4出版社のニュースリリースのリンク
提訴した各社がそれぞれニュースリリース発表しているのでURLを以下に示します。
KADOKAWA
ニュースリリース『クラウドフレア社に対する訴訟提起について』
https://group.kadokawa.co.jp/information/media-download/603/31558cd75ff54568/
講談社
ニュースリリース『米国「クラウドフレア」社 提訴のお知らせ』
https://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2022/20220201_Cloudflare.pdf
小学館
ニュースリリース『悪質な海賊版サイトが利用するコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)事業者、「クラウドフレア社(Cloudflare,Inc、本社:米国・カリフォルニア州サンフランシスコ)」提訴について』
https://www.shogakukan.co.jp/sites/default/files/manual/20220201.pdf
集英社
ニュースリリース『出版 4 社、海賊版コンテンツの公衆送信・複製の差し止め及び損害賠償を求め、米クラウドフレア社を提訴』
https://www.shueisha.co.jp/wp-content/uploads/2022/02/shueisha-20220201.pdf
訴訟の請求内容
それでは、原告各社が何を請求しているのか見て行きましょう。
先ず分かりやすいのが賠償請求です。金額は全額ではなく被害の一部だけの請求としています。原告1社ごとに1作品だけを取り上げて4作品で4億6000万円としています。これは単純に4で割って1作品1億1500万円だと思います。
実際には4作品だけが不本意に公開されているのではなく数十作品が公開されているのですが、何故4作品だけしか提訴しなかったかは、この訴訟が上手く通れば次々に訴訟を提起して請求したいと考えていて、最初から全部として例えば100億円としてしまうと、訴訟額の従量制である弁護士費用や訴訟費用が高額化して費用負担が増大してしまうからです。勿論、勝ち取れる自信があれば最初から全額請求するでしょう。一部請求にしているのは、裁判に勝ったとしても賠償額を回収出来る見込みが低いことから、弱気になっているであろうことが伺えます。
この訴訟のポイントとしては、本来効力のある米国の裁判所への訴訟ではなく、米国内の企業にはほぼ執行効力が期待できない日本の裁判所(東京地方裁判所)へ提訴している事です。効力が期待できないというのは、民事裁判で勝訴した場合、国や裁判所が賠償金を敗訴側から分捕ってくれる仕組みはなく、勝訴で勝ち取れるのは請求権だけです。その請求権で請求の執行ができるわけですが、執行できるのはあくまでも日本国内にある資産のみです。差し押さえできるのは米クラウドフレア社が日本に不動産や債権を持っている場合のみです。なので、仮に勝訴したところで賠償金を取れる見込みは低いというのは明白です。
では何故、執行効力のある米国の裁判所(サンフランシスコ郡上級裁判所=クラウドフレア社の本社はサンフランシスコ市で訴訟額2万5千ドル以上の第一審裁判所)に提起をしなかったのかですが、米国では違法ではないと判決が下る=つまり敗訴の可能性が高いと判断したのだと思います。それはクラウドフレア社が違法コンテンツのサーバを管理しているわけではなく、あくまでもCDNというネットワークトラフィック制御をしているだけだからです。
米国の裁判所は意外とIT知識が高くインターネットに於けるCDNの役割も熟知しているので、CDNが違法コンテンツの流布との共犯性を認める可能性は低いのですが、日本の裁判所は米国司法とは別の目線で判断してくれるので、一定の勝算があると考えての今回の提訴と思われます。
勝訴すれば国内マスコミも大々的に報道するでしょうから、啓蒙活動としては効果を見込めるというところが今回の着地点であろうと推測できます。とにかく日本の読者に使わせないという効果があるのであれば提訴する価値ありというところでしょう。
コンテンツの違法配布、難しい問題ですが解決出来る事を祈るのみですね。