わかりやすい健保年金の随時改定(月額変更届)

経営

法人(事業所)の健康保険・厚生年金の事務負担は煩雑です。本稿では、会社の従業員に対する健康保険・厚生年金の保険料改定についてまとめてみました。

まず、健保年金保険料の改定は大きく分けて定時と随時の二種類があります。正式には「定時決定(算定基礎届)」と「随時改定(月額変更届)」といいます。

それぞれの違いを下表に示します。

定時決定(算定基礎届)随時改定(月額変更届)
提出時期毎年7月10日が提出期限変動条件が合致したらすみやかに(※1)
提出先事務センター or 管轄年金事務所事務センター or 管轄年金事務所
提出方法電子申請、郵送、窓口持参など電子申請、郵送、窓口持参など
※1 条件については後述します

なお、事務センターというのは、日本年金機構の広域事務センターのことです。管轄が幾つかありますが、東京都の場合「東京広域事務センター」が管轄となります。郵送する際、住所は不要で下記のように封筒に書くだけで届きます。

135-8071
日本年金機構 東京広域事務センター 御中

定時決定(算定基礎届)は、全国どの法人(事業所)も一斉に必ず提出しなければなりません。なので年1回は必ず社員の給与額の届けをしないといけないことになります。4月・5月・6月に支給された給与の平均額で保険料が決定されます。給与額は、住宅手当や家族手当などの各種手当や残業代も含まれます。なので、4〜6月に多く残業をしてしまうと、それが今後1年間の保険料になり、割高な保険料を負担することになるので注意が必要です。極端な事例だと、4〜6月にそれぞれ100時間の残業をしてしまうと、その後、7月〜翌年3月まで残業0時間なのに、その月も残業100時間相当の保険料が課されるわけです。

昨今の保険料は決して安くはありません。健康保険と厚生年金のダブルで過重保険料となるのもポイントです。残業ゼロで基本給20万円ならば標準報酬月額は20万円、健康保険料額 9,840円+厚生年金保険料額 18,300円 = 28,140円が天引き(会社負担も含めると 56,280円)が毎月負担する保険料なのですが、そこに残業代100時間をプラスしてみましょう。通常の法定勤務時間は週40時間、月160時間です。残業代(時間外労働)は25%の割増額、休日出勤は35%、深夜労働は50%、法外残業も50%の割増となるので、仮に100時間残業して残業代20万円加算で給料40万円になってしまうと、保険料算定基準の標準報酬月額は41万円(27等級)になり、健康保険料額 40,344円+厚生年金保険料額 75,030円 = 115,374円が天引き(会社負担も含めると 230,748円)となるわけで、それが残業ゼロの月もずっと1年間払い続ける義務が生じるのです。毎月3万円のはずが12万円!?まるでソシャゲー課金地獄ならぬ社会保険料地獄、悲劇でしかありません。なので、4〜6月は出来る限り残業を少なくすることが節税となります。

なお先ほどから標準報酬月額と書いていますが、健保年金では保険料を給与額そのもので決めるのでははなく「標準報酬月額」に置き換えて決める仕組みとなっています。「標準報酬月額」とは、給与の支給額の範囲をまとめたもので、例えば給与が19万5千円の会社員の標準報酬月額は20万円(17等級・東京都の場合)となります。この17等級の給与範囲は 195,000〜210,000円なので、この範囲であれば一律20万円が標準報酬月額となります。この標準報酬月額は「令和○年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」を参照すれば一覧表となっているので簡単に算出することができます。

【参考】令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)

令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)

この「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」は各都道府県の単位で異なるので、下記リンクより自社の該当する保険料額表を使用してください。

日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

以上随時改定の説明の前に定時決定の説明をざっとしましたが、ここからは随時改定の説明に移ります。

随時改定(月額変更届)について

毎年7月に強制的に提出させられる「定時決定(算定基礎届)」とは別に、都度、変更があれば提出しなければならない「随時改定(月額変更届)」というものがあります。

この随時改定(月額変更届)は、給料額が変わったら毎回提出しないといけないのかというと、必ずしもそうではありません。ここが我が国の社会保険手続きの複雑さなのですが、随時改定(月額変更届)にはトリガー条項があります。

前提として固定給の部分で変更があることがトリガー発動条件となっています。つまり突発的に100時間の残業が発生したところで、随時改定の条件には当てはまらず月額変更届を提出する必要はありません。先ほどの定時決定でタイミング悪く残業100時間やったら1年間保険料地獄というケースとの違いはここにあります。同じ残業100時間を3ヶ月やったところで、基本給の変更などが無いのであれば、保険料が増額しないのです。なんとも理不尽なルールですが、ルールはルールなので仕方ありません。

とにかく毎年の昇給・ベースアップの実施がトリガー条件となります。勿論、昇給だけでなく何かやらかして主任から平社員に降格して降給された場合も変動トリガー発動となります。

前述の定時決定は4〜6月の変動が対象となるので、4月に定期昇給となっている会社(事業所)は、随時改定する必要がありません。定時決定だけで済んでしまいます。

ところが、下図のように定期昇給が毎年3月となっている会社の場合、定時決定の他に随時改定で月額変更届も提出する必要が発生します。勿論、制度として定期昇給が存在しても実際に昇給がないか標準報酬で2等級以上の変化が無いのであれば月額変更届を提出する必要はありません。

ただし、定期昇給だけでなく、トリガー条項となるのはあくまでも「固定給の変化」であることに注意する必要があります。固定給部分の変化は基本給の変化だけではなく、役付手当、住宅手当、家族手当なども含まれるのです。

という事は、例えば定期昇給が4月の会社だけど、おめでたいことに奥さんが出産して子供が生まれて家族手当が加算、基本給24万8千円に2万2千円の家族手当がつく事になり基本給+家族手当で27万円になりましたとなると、実は社会保険料としては19等級から21等級になるので、これはトリガーが発動してしまっています。随時改定になるので月額変更届を提出しないといけないのです。

では、突発的に固定給の変動が発生しトリガー発動となり随時改定・月額変更届を提出するスケジュールを図で示しましょう。

これは3月に家族手当の支給が開始されたケースです。この会社では毎月末締め翌月15日に給料日というパターンです。社会保険料算定では給料日ベースではなく、発生ベースなので月末日で1月目がカウントされます。3月・4月・5月を平均して標準報酬月額が2等級以上の変化となれば随時改定となるので6月の早い時期に月額変更届を日本年金機構の事務センター or 管轄年金事務所へ提出する必要があります。

月額変更届は下記リンクからダウンロードできます。Excel版も用意されています。年金機構職員のExcel職人が頑張って作ったのでしょう。並々ならぬ努力は認めますが、こういうのは記入可能PDFで提供する方がよりベターでしょうとIT技術専門家からアドバイスを戴きました。

月額変更届の様式ダウンロード

提出は本稿で前述した広域事務センターへの郵送でも直接、窓口へ持参しても構いません。また、Windows専用のインストール型で必ずしも使い勝手が良いとも言えないソフトを使って電子申請することも可能とされています。電子申請についてはまた機会があれば別稿で紹介したいと思います。

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